TCFD提言に基づく情報開示Information Disclosure Based on TCFD Recommendations

PCIグループは、気候変動による事業への影響を重要な経営課題の一つと捉えております。
2022年11月、その取り組みの一環として、当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、気候変動への取り組みと情報開示を強化いたしました。これからも、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に沿った情報開示の充実を進めるとともに、気候変動を始めとするリスクと機会に適切かつ適時的に対応し、持続可能社会の実現と中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

Ⅰ.ガバナンス

当社グループは、取締役会の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置し、気候変動問題を含めたサステナビリティに関連した重要事項の審議を実施しております。
本委員会は、原則として四半期に一度開催され、サステナビリティに関する基本方針や重要課題(マテリアリティ)の特定、重要課題に基づく目標設定や進捗管理、情報開示に関する事項等の審議を行い、また定期的に(1年に4回)「取締役会」に報告し、その監督を受ける体制になっております。本委員会は、代表取締役が委員長を務め、また、各グループ企業代表取締役(当社執行役員)及び当社事業関連部署責任者を委員とすることで、グループ全体の事業との連動性を強化する体制としております。
「取締役会」では、気候変動を含めたサステナビリティ課題に係る基本方針や重要課題を踏まえた上で、総合的なリスク管理の観点から、事業戦略、投資計画、BCP等を審議・決定いたします。

Ⅱ. 戦略(リスクと機会の分析)

当社グループは、気候変動問題への対応は、中長期的な企業価値に大きな影響を及ぼす重要な経営課題として認識しており、当社グループにとってリスクにも機会にもなりうると考えております。

1.PCIグループが直面している主要な気候変動関連のリスクと機会(シナリオ分析)

気候変動に関しては、当社グループでは、①移行リスクシナリオ(1.5℃以下シナリオ)、②物理的リスクシナリオ(4.0℃シナリオ)、の2つの代表的なシナリオを想定し、2030年代までを中心に、当社の主力事業であるITソリューション事業(エンベデッドソリューション事業、ビジネスソリューション事業)、IoT/IoEソリューション事業、半導体トータルソリューション事業に及ぼすリスクと機会を検討いたしました。

なお、2024年9月期第1四半期より、事業セグメントの区分方法を見直し、報告セグメントを従来の「ITソリューション事業」「IoT/IoEソリューション事業」「半導体トータルソリューション事業」の3区分から「エンジニアリング事業」「プロダクト/デバイス事業」「ICTソリューション事業」の3区分に変更しております。

  1. ①移行リスクシナリオ(1.5℃以下シナリオ)
    • 2050年までに地球規模で温室効果ガス排出量ゼロを実現する規範的シナリオ
    • 政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2021」の「NZE2050シナリオ」、平均気温など気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP1-1.9シナリオ」に原則として準拠
  2. ②物理的リスクシナリオ(4.0℃シナリオ)
    • 現時点で公表されている温室効果ガス削減に関する政策や目標の撤回を含めて、気候変動問題に対する有効な政策が実施されないシナリオ
    • 政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2021」の「STEPSシナリオ」、平均気温など気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP5-8.5シナリオ」に原則として準拠

気候変動に関するリスクと機会については、当社グループ企業への意識調査に加え、外部有識者の意見も踏まえてサステナビリティ委員会が中心となってその選出と特定を行いました。

また、2023年3月の「IPCC第6次評価報告書」によって示された、世界の排出量を2019年比で2030年までに約43%、2035年までに60%削減することの緊急性が高まっているという見解を受け、今後、当社グループにおける削減目標の見直しを検討いたします。

2.リスクと機会への対応策

相対的に、収益や資産など財務面への影響が大きいと考えられるリスクと機会について、当社グループはその対応策を改めて検討いたしました。その主要な結果は、以下の通りです。
今後も、緊急度の高いリスクと機会を優先して対応策のさらなる拡充を図るとともに、気候変動を含めたあらゆるリスクと機会の把握に適時的に努めてまいります。

Ⅲ. リスク管理

当社グループは、企業経営に関連するさまざまなリスクに対応するため、「サステナビリティ委員会」 がリスク管理の充実に努めております。
2022年7月にサステナビリティ委員会を設置するまで、当社グループでは、PCIホールディングス常務会の諮問機関である「コンプライアンス・リスク管理委員会」がその管理を行ってまいりました。しかしながら、昨今の経営環境の不確実性の高まりなどを受け、当社グループでは、サステナビリティ課題を含めた広範なリスクと機会を新設したサステナビリティ委員会で管理する体制といたしました。(コンプライアンス・リスク管理委員会は「コンプライアンス委員会」と改称し、法令の順守や企業倫理の徹底などのコンプライアンス管理を中心とした、社内調査権のある組織に改編。)

気候変動に関するリスクと機会については、当社グループ企業への意識調査に加え、外部有識者の意見を踏まえながらサステナビリティ委員会を中心に定期的に選出・特定をする体制を整えております。特定した重要なリスクと機会に関しては、サステナビリティ委員会において、対応方針、施策、目標の策定とともに審議いたします。審議された内容は取締役会に報告され、その監督の下、最終決定されます。また、経営戦略に関する意思決定など、経営判断に関するリスクについては、必要に応じて外部の専門家の助言を受け、関係部門において分析・検討を行っております。

Ⅳ. 指標と目標

1.気候関連リスク及び機会を評価する指標と目標

当社グループは、環境負荷に関する重要なリスクである温室効果ガス排出量について、GHGプロトコルの基準に基づき、

  1. 自社の製造プロセス・事業活動における重油・ガス等燃料使用による直接排出(Scope1)
  2. 他社からの電力・熱の購入などによる間接的な排出(Scope2)
  3. Scope1、Scope2以外の間接排出(当社グループの活動に関連するサプライチェーンの排出)

につき計測を進めており、 Scope1・Scope2の合計についてはその削減目標を設定しております。

2.温室効果ガス排出量の削減目標及び実績

  1. ①削減目標

    当社は、温室効果ガス排出量につきましては、Scope1・Scope2の合計について2030年度までに46%削減すること、2050年度までにScope3を含めてカーボンニュートラルを目指すことを目標として、その削減に取り組んでまいります。
    また、事業活動や領域の変遷に伴う温室効果ガス排出量の影響を考慮するため、売上高単位当たりの温室効果ガス排出量(排出原単位)を参照指標として、影響度の高い会社(以下、対象会社)を中心に削減目標を設定してまいります。

  2. ②実績

    当社の温室効果ガス排出量(Scope1・Scope2の合計)については、2023年9月期現在565.937t-CO2となっております。このうち、対象会社の排出量は、485.90t-CO2、排出原単位は0.022t-CO2/百万円となっております。
    2023年9月期においては、期中に連結子会社となった2社の影響度の観点から、当社グループの96.7%の事業範囲(連結売上高に占める単体売上高の割合)で算定しております。
    エネルギー使用における効率化やエネルギーに関わる設備修繕の徹底などの施策を進めたことで、基準年度から2023年9月期までに排出量で7.8%、排出原単位で25.9%削減しております。
    なお、Scope3の算定範囲は、カテゴリ6(出張)及びカテゴリ7(通勤)とし、集計範囲の拡大につきましても今後検討してまいります。

    排出量の数値は、一定の仮定や前提を置いて導き出したものであり、独立した第三者による保証・検証を取得しているものではありません。今後、算定範囲の拡大、精度や粒度の向上、リスクシナリオ分析の高度化、適用する排出係数・排出原単位の変更、算定方法に係る国際的な基準の明確化に対する議論の動向等により、当社グループで把握。公表する数値についても将来的に変更となる可能性があります。

Scope1・Scope2の合計の削減目標となる対象会社の範囲は、連結売上高の75%を目安としております。
基準年度は、2017年9月期(対象会社:PCIホールディングス株式会社、PCIソリューションズ株式会社)、2021年9月期(対象会社:株式会社ソード)とし、合計値を記載しております。